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工業デザインの練習帳

1988年生まれの工業デザイナー秋山慶太のブログです。

歌う理由 あけたらしろめと秋山慶太のキャラクター展を終えて

デザイン 考えごと
展示について、なにか書かなくちゃなと思いながらずっと文章が書けないでいました。
展示を通して出会ったひとがめちゃめちゃ多かったし、自分のものづくりに対する考え方もかなり変わっちゃったので、簡単にはまとめられないなと思ってたんだけど、まとまらないなりに書いてみます。

Photo by Rakutaro
 
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展示に来てくれた方ならなんとなく分かるかと思うんだけど、Tシャツに版を乗せてインクを刷り、ゆっくり版をはがしてシロくんとメロさんのイラストが現れた瞬間に、何かがパカーッと開いていきなりTシャツが歌いだしたように感じるときがあった。(あったよね?)
 
 
Photo by Shuhei Nakamura
 
 
僕自身のかたちシリーズでも何回かそういうことがあって、その思わずわあーっと声が出てしまうような体験は、今までやっていたものづくりとはまるで違ったものだった。自分たちでやったことに対して言うのもなんだけどすごくよかったと思う。ライブ感があったし、手作り感もあったし。すごく近くて親密だった。
 
 
Photo by Rakutaro
 

Photo by Shuhei Nakamura


いまの工業製品は作り手と使い手がすごく遠い。
企画を立案する人、設計する人、かたちを考える人、売る企画を立てる人、売る人が全部違っていて、買う人は作る人のことなんてまるで知らないし、メーカー側でも作る人のことをなんとなく隠している雰囲気がある。
あなたは私のことを知らないし、私もあなたのことを知らないけれどあなたは私のつくった道具を使っているということ、つまり工業製品のもつ「遠さ」は決して嫌いではない。工業製品特有のクールさとか、べたべたしないすっきりとしたたたずまいとかって、この遠さに由来するものでもあると思う。
だけど、これすごい!!っていう興奮とか、好きです(あるいは、よくわかんないです)っていう反応とか、ありがとう!!っていう気持ちとかは、近ければ濃くなるし、遠くなればなるほど薄くなってしまうのだなと感じた。自分たちのつくったものが部屋にあって、そこに誰かが来てくれて、何か話すっていう経験はシンプルだけどすごく強いし、楽しい。
今回、こういう体験ができたことはとってもよかった。
 
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それから自分のことについて。
いままで僕がプロダクトデザイナーとしてメーカーで作りたいと思っていたものは、歌のなかのひとつの音のようなものだった。
人の生活はそれ自体で歌みたいなもので、どんな風に起きて寝るか、どんな風に働いて遊ぶのか、どんなものを持つのかとか些細なことが積み重なってその人のメロディができていく。だからその中にあるものは響きの一部でしかないし、あんまりエモくするのもかえってじゃまかと思っていた。用意した作品ももともとは無口なものだったし、外向きというより内向きだったと思う。だけど、大阪から東京へと展示をして人と会う間に、どこかで自分の作品が変わって、すこしずつ歌いだしたような気がした。で、そしたら不思議なことに作品が良くなったんだ。
 
Photo by Rakutaro
 
 
Photo by Rakutaro

 

しろめくんの絵はもとからのびのびと歌ってて、そののびやかさが羨ましかった。
彼は絵を描くときに歌を聞きながら手を動かすらしい。(平賀さち枝がアツいらしいですよ)最初聞いたときはなぜそんな強いものを摂取しながらアウトプットができるのか不思議だったが、この間平賀さち枝のライブに行ってなんとなく納得した。彼の絵と同じのびのびした力があったから。なぜそう思ったのか、自分でもよくわからなかったけど。
 
歌みたいな強いメッセージを発してるものを自分で作ることに今までなぜか抵抗があった。もともと幾何的なものとかが好きということもあったし、自分が歌ったところでだれも聞いてくれないだろうというひねた気持ちもあったんだと思う。だから、学校を卒業してからは特に、「デザインの技術を上げたい」という気持ちが先行して、なんとなくテクニカルなことばっかりに気を取られていたし、歌的なものを否定しようとしていたように思う。
デザインがうまいからといってそのものがよくなるわけではない。展示のちょっと前、ある人に「クオリティだけじゃなくてなんか魅力みたいなものが欲しいよね」と言われたことがあってずっと引っかかっていたんだけど、確かに有能なデザイナーが能力を発揮して作ったハイクオリティなデザインとか、今あんまり魅力的じゃないかもしれない。なんか、よさってもっと別のところにあるような気がしてきている。
 
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自分の作ったものを人にうけとってもらえたり、評価してもらえたりすることはすごく嬉しい。土曜に京都精華大思い出野郎Aチームのライブを見に行ったらギターの斉藤くんがかたちTを着てくれていたし、展示が終わった後に雑貨作家の骨さんに自作の額を渡したら素敵なお返しを贈ってもらったりと、リアルな手応えがすごくてほんと感動した。かたちシリーズをそのまま立体にしたかたちブローチを送ってくれたんだけど、これほんといいです。半分自分のことだけど自慢したい!!
 
図形ブローチとかたちブローチ



僕にとって今までものづくりは単なる好奇心の追求だったんだけど、人に渡せるものを作ること、人のために作ることのよさがやっときちんと理解できた。会社だとこれをユーザ目線でとか、マーケットインでとかって表現したりするけど、そんなんじゃなくてもっといいもの。例えば、誰かにごはんを作ってあげて、うまいねって言われるくらい基本的で強いことだと思う。
 
これからもいろんな形でものづくりを続けていくつもりだけど、今回の展示は大きな転換点になった。誰かのために作ることと、歌うものを作ることは大事だよという、そんな誰でも知ってるよと言われてしまいそうなことに、やっと気がつけて良かった。
 
 
改めて、あけたらしろめと秋山慶太のキャラクター展に関わってくださったみなさま、本当にありがとうございました。もっといいもの作るぞ!!!