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工業デザインの練習帳

1988年生まれの工業デザイナー秋山慶太のブログです。

2011年に手に入れた本 ベスト5

デザイン






今年もあっという間に年の瀬になってしまいました。特に秋からが速かった。

社会人になり、使えるお金が少し増えたこともあって、今年は意識して本をたくさん読むようにしていました。(買った本の半分以上はビジュアル中心なので、読んだとは言えないかもしれませんが)

ただ読んだだけではもったいないので、自分の考えを振り返るためにも、今年読んだ本のベスト5を紹介します。どれもよい刺激をくれたすごい本なので、一読して損なし!






1位 「日本デザイン論」
伊藤ていじ著 鹿島出版会 SD選書

1966年発行、著者が海外の大学で日本の伝統文化が培ってきたデザインを教えるために書いた原稿をもとにまとめた本。建築、空間デザインの分野が中心ですが、プロダクトの人も楽しく読めます。

テーマは日本のデザインですが、切り口は情緒的というよりも分析的。著者が”我が国の伝統的なデザインを主題にしながら、西洋のメスを使って新しい現代的な解釈を加える"と語っているように、とらえどころがないように見える日本文化の造形エッセンスをさくさくと解剖しています。
最も惹かれたテーマは、一章の「直線の変形」。
その中の、日本の大工がかつて使っていた道具「撓み尺」についての記述が面白かったので抜粋してみます。

"それは杉または桧の薄く細長い板である。その長さは決まっていない。(略)そのまま横たえてあれば、それは明らかに直線状をなす。しかし彼らがその薄く細長い板の両端を指先でつかみ力を加えると、そこに一つの曲線がつくりだされる。(略)棟梁はその薄板を削り、力を加えながら、ああでもない、こうでもないと適当で美しい曲線をつくりだそうと努力してきた。確かに直線といい、曲線といい、見かけの上ではまったく質的にちがったものである。しかしこうした「撓み尺」を通じてみられる発想の仕方では、曲線も直線も線というもののひとつの変形にすぎない。"

このように、語り口は明快で簡潔。このほかにも、屋外と室内の考え方、日本的アシンメトリーの構成、構成要素の引き算など、面白いトピックが盛りだくさん。またほとんど常に、日本と西洋の方法論を照らし合わせながら解説してくれるのも非常にためになります。50年近く前の本ですが、いま読んでも十分通用する内容です。

もちろん、この本の考え方がすべてではないでしょうが、日本の造形を見る上でのよい指標となる本だと思います。単なる「和風デザインについての本」ではなく、もっと深いところで日本文化を消化するための入り口となる一冊です。






2位「ロングテール「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」
クリス・アンダーソン著 篠森ゆりこ訳 ハヤカワ文庫 juice

全然今年の本じゃないのですが、とてもエキサイティングな内容だったのでランクイン。

ロングテール」とは、ある商品群の売り上げをグラフ化したときに現れる、長いしっぽのこと。
商品を1位から横に並べたとき、最初のいくつかの「ヒット商品」を過ぎると、売り上げは急に低くなります。しかしゼロになることはなく、グラフは長ーく続いていく。(参照)
100個の商品を並べて売る商店では、「その他大勢」の売り上げはヒット商品に遠く及びません。しかし、1,000,000個の商品が並べられるwebショップの場合、その他大勢の売り上げはヒット商品をしのぐ―つまり、ヒット商品だけに価値があるわけではない、というのがこの理論の概要です。

このように説明すると、売るための技術を解説した本かと思われてしまいそうですが、そんなことはありません。「Wired」編集長の著者が触れるトピックは、マニアックな音楽、Youtube3Dプリンタなど、通常イメージするビジネス書から逸脱しているため、楽に読めると思います。また、この本は著者のブログを通して多くの人によって洗練されてきたようで、とてもわかりやすい。

私見ですが、著者が「ロングテール」を通して最も言いたかったことは「メインストリーム以外のものが認められる世の中になってきた」ということではないかと思います。
一番売れるものが一番良いとは限らないし、自分の作るものが世界一にはなれなくても、ネットワークを使えば、世界のどこかのそれを求めている人に渡すことができるかもしれない。これは「その他大勢の制作者」を強く勇気づけることです。

もう5年近く前の本なので一部ネタが古いところがありますが、読んだときの衝撃度は今年一番といってもいいかもしれません。






3位「民芸染紙紋様百趣」
衆互社

梅田の古本屋で偶然手に入れた、全ページ和紙、和綴じの豪華本。

限定250部の頒布ということで、おそらくここに紹介した中で一番手に入りにくい本だと思います。型染めの和紙のサンプル帳で、一ページに二枚、実物の和紙が挟まっています。生き生きとした線や配色、ざくざくとして暖かみのある質感など、シンプル・スマートを旨とする現在のグラフィックデザインではなかなかお目にかかれないような要素を生で見ることができます。

詳しくは以前紹介した、こちらの記事で。






4位「Made by Hands」
Mark Frauenfelder著 金井哲夫訳 O'reilly Japan

一見、変わり者のおやじのDIY奮闘記ですが、よく見ると既製品に依存しきるのではない、新しいライフスタイルへの示唆に富んだ面白い本です。興味深い資料の引用も多い。

都会生活に疲れた著者一家は、時間がゆっくり流れるユートピアを夢見て南の島に引っ越しますが、現実は厳しく、移住生活はあっけなく失敗に終わってしまいます。
アメリカに戻った著者は、できることから生活を変えようと、家族とともに「自分の生活を自分で作る」DIYを始めます。個性的な先輩たちに支えられて、野菜を作ったり、エスプレッソマシンを改造したり、ニワトリを育てたり、ギターを作ったり・・・

時に楽しく、時に家族に眉をひそめられながら様々な問題に体当たりしていく姿が眼に浮かぶような文章で楽しく読めます。読み進めていくうちに、作り手と消費者が分離している自分自身の生活に問題を投げかけたくなる、かもしれない。

全編を通して強調されていることは、「失敗はダメなことではなく、必要なこと」「失敗から学べ」ということ。ものづくりに関わる身としては、かなり励まされました!







5位「Dieter Rams: As Little Design As Possible」
Sophie Lovell著 Phaidon

Braunのデザイナー、Dieter Ramsの作品集。400P近くに渡って、彼のデザインした製品が美しいレイアウトと写真で収められています。

パラパラとめくっているだけで、Ramsの透徹した美意識を見ることができます。掲載されている製品は幾何形態の組み合わせが多く、プロポーション、仕上げ、細かいRなどの処理、文字やボタン、つまみなどのグラフィカルな要素やカラーリングなど、あきれるほどの完成度で今見てもカッコいい!製品そのものの写真だけでなく、スケッチやRams邸、仕事場などの写真も載っています。特に、道具が整然と整理された仕事場の写真は必見!

英文の本なので、文章はほとんど読めていないのですが、(笑)ビジュアルだけでも十分!資料として使い倒したい本です。

こちらで、中身の写真を少し見ることができます。




・・・そういえば、今年は小説を一冊も読んでないです。来年は、ちょっとは読みたいな。よいお年を。