工業デザインの練習帳

1988年生まれの工業デザイナー秋山慶太のブログです。

「新版 論文の教室」はめっちゃ役に立つ本

戸田山和久「新版 論文の教室―レポートから卒論まで」を読み終えた。

昨年深圳でお会いした松田さんがTwitterでおすすめしており、面白そうだなと思って買ってみたのだけれど、これはものすごく役に立つ良い本だった。

 

新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)

新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)

 

 

僕にとって特に有用だったのは、パラグラフ・ライティングについての第7章と、分かりやすい文章と分かりにくい文章の違いについて触れた第8章。

特に第8章では、具体的にどんな書き方が分かりにくいのかの実例をあげながら、それらを改善するための方策をいちいち教えてくれる。この中で、「自分もやってる…」と一番ドキッとしたのが、「ゾンビ文」だ。

 

【例】実在論と観念論の違いは、人間の認識活動から独立して存在する実在を認めるかどうかという点が異なる。

 

う…おかしい。おかしいけど、何がおかしいのか分からない。文章の意味がわかるかはさておき、何か違和感がある。でもなんだろう…?

著者によると、この違和感は、文章の主語と述語が対応していないことによって生まれている。つまり、

 

実在論と観念論の違いは、人間の認識活動から独立して存在する実在を認めるか否かという点だ。」

 

 

だったら良いということ。確かに違和感がなくなっている。「AとBの違いは〜だ」という形にハマったことで、余計な引っかかりがなくすらっと読めるものになった。

「一見おかしくないようで、実はおかしな書き方」の文章を自分が書いているときって、古い油で揚げたフライを食べたときのような不快感があって気持ち悪かった。しかもその原因がわからないから余計に始末が悪い。だけど、気持ち悪さの原因を知ることができると、注意しながら書くことができて文が少しはましになる。

 

このように、豊富な実例を見ながら主人公の論文ヘタ夫くんと一緒に少しずつ歩みをすすめていくことで、一冊読み終えると自分もきれいな文を書けるような気になる。

…気になる、というだけで書けるようになったわけではないよ、ということも巻末に書かれていて、そうですねとしか言いようがないのですが。

 

それから、本のそこここからにじむ「文章を書くことに対する敬意」のようなものが印象深かった。この方は本当に文章を書くのが好きで、読むのが好きなのだなあと感じさせるポジティブな態度が一冊に通底していて、読んでいて気持ちがいい。

何かを批判する場面でも決して感情的にならずユーモアをもって行っている。批判するときって、大体その対象について腹が立っているので、うかつにすると建設的な批判じゃなくただの攻撃になる。それはだめだよと諭されているようで身につまされます。

 

こんな風に考えたい、書きたいなあと思わせられる、とても良い本でした。

文体がいわゆる「おやじ」っぽく親しみやすいので、読んでると移りそうになるのも…ヤバいっすね。